2015年 10月 19日
2015 Season2 楽 苦 Ease the bitter seeds bitter is easy species |
下半期を迎えた自分は
連日の激務に疲れていた
普段なら秋の遠征に向けて心躍る時期に差し掛かっても
「釣り」というものから少々離れ、自分を見失いながら
少し嫌にもなっていたのかもしれない
都会の景色の中で
人の波を掻き分け
自分なりに懸命に切磋琢磨してきた
結果、生活していく上で得たものと
見失うもの
言わば自分にとって
毎年の遠征は
見失いそうな自分を
見つめ直せる時でもある
かけがえのない時間でもある
ひとたび飛行機に飛び乗り
2時間もすれば
広大な大地が目の前に広がり
鹿や野生動物が横切る道を
ゆったりとした気持ちで
師の住む街に向かう
台風前には現地入りすることができたが
初日に、仲間が遠征中に知り合った
新しい北の大地の仲間と出会い
仲間が1本の素晴らしい魚を手にすることができ
ほっとしたのもつかの間
次の日には、台風が上陸
やることもなく、時間を持て余すかとも思ったが
最近ゆとりのなかった自分にとって
やることがない、そんな時間がたまらない時間でもあった
ゆったりフライをタイイングしてみたり
ラインシステムを見直したり
外の雨を眺めたり
退屈という時間が、たまらなく心地よい時間に感じた
台風の影響で我ホームの河川は数日間絶望的
そんなことで、合流した仲間と
普段は訪れない止水を回り
その地に住む仲間とのんびり水辺で寝転んだりしながら
美しい水辺を眺めた
内地でも親しくしていただいている仲間と合流し
安定しない天気の中
浮かべたドラワカを眺めたり
ひとつひとつの時間が
心にしみるほどたまらない時間となった
遠征前半は、そんなゆったりとした時に身を置き
河川の状況が落ち着き
激濁りであろうが
川に立つ
そんな激濁りの中からでも
我が師は魚を出す
水の中に糸が入っていれば
必ずチャンスは訪れる
そう師に教わってきた
北の大地の魚は
正直簡単には口を使ってくれない
有志の放流がある河川ならまだ知らず
我ホームのこの河川は
過去には放流が行われてきたが
近年放流活動がない
釣れないからこそ
考えさせられ
釣れないからこそ
何度も訪れる
釣れないからこそ
どうしたら魚が口を使ってくれるのかを
逆算して考え
物事の根本を見直す時間をくれる
街もアナログだからこそ
自分を見つめ直す時間をくれる
自分はここに
釣りたいからという意味では通わない
むしろ
釣れないを考えたいから通っている
楽
心身に苦しみがなく、安らななこと
苦労するまでもなく、たやすいこと
人は人生の中で、小さなことに悩み、苦しみ
楽を忘れる
人生の中で、確立された立場から人にヒントを与え過ぎてしまい
楽とも見える道は、苦になることさえある
苦があるから楽を知り
楽があるから苦を乗り越えられる
この場所は自分にとっての
楽であり
この場所の釣りは自分に
苦を与えてくれる
針先から逆算して
釣りを見直し
どうしたら魚が口を使うか
むしろ、どのように魚の口に針を流し入れられるのかまで
様々なことを自分なりに考える
原点は何なのか
どんなことをしたいのか
自分のしたいことは
自分で考える
したいことを考えることこそ
釣りの楽しみなのではないであろうか
考えて、考えたシステムを
流れに投げ入れる
思った通りにラインがポイントに差し掛かった時に
心の中で「ドーン」と魚が掛かったイメージを投げかけても
妄想ではここだ!という場所で魚からの反応がない
そしてまた考え直す
そしてまた流しに向かう
この場に通い6年
毎年 毎年 自問自答し考えてきた
昨年は、そんな中、魚の活性も味方して
多数掛けることができた
それが今年は、小さい魚すら反応がない
何故だ 何故だと考える
実はそんな時間がたまらなく楽しい
考えて答えを探している
釣れない時間こそ
実は、次に繋がる最も楽しい時間ではないのかとすら思う
現場では、現場で使いやすいものが一番
それは人それぞれで、これが一番という答えはない
どんなシステムでも道具でも
自分からその道具に合わせていかなくては、道具の持ち腐れになる
道具がどのように使って欲しがっているのか
その道具が魚を釣る為なのか、何の為に機能したがっているのか
それにより使い方も変わってくるはず
シンクティップひとつとっても同じ
送り込める幅の大きな人は同じレートでもより深くまで行くだろうし
速度を抑えながら徐々に沈ませたいなら、レートはやや高めだったりと様々
それがフライの比重なのか、ウェイトを足すのか
それは人により異なり、流により異なる
これまた自分のやり方に調和させていく
人生の流は、人によって異なり
川を流す一本のラインも、人それぞれ
何よりも、糸を垂れる時間を
心から楽しめることこそ
釣りの素晴らしさでなくてはならないと自分は心底感じている
遠征前、自分は釣りに疲れていた
そして、この遠征で
自分はまた釣りが大好きになった
今こうして、都会に戻り
人工物の立ちはだかる街の中で
PCで人混みを眺めながら、このブログを綴る
今年、他界した叔母が、自分に生涯一度だけくれた言葉
「楽は苦の種 苦は楽の種」
徳川光圀(水戸黄門)の言葉である
今の苦労はいつか未来の幸せとなり
今の苦しみは、自分を強くしてくれる
楽だけを募れば、弱くなり
その反面で失うものもある
楽を得れば苦に出会い
苦を得れば楽に出会うの繰り返し
人生 楽ありゃ 苦もあるさ
という歌の意味も、この歳で身に染みる言葉に感じました
遠征が終わり、アスファルトの街で
人混みに飲まれながら働き
来年もまた 同じ場所で釣糸を垂らす為に
また一から苦も楽も超えて行こうと
身を引き締めていこうと思います
この旅でご一緒できた全ての素晴らしい「釣人」の皆様
来年もまたどこかの北の大地で釣糸を垂れましょう
何よりも永きに渡り、多くを説いてくれた
多くの
我が師に
2015 秋 終了
2016に続く
by fourseasonss
| 2015-10-19 14:44